類は類を呼ぶというのだろうか、日曜学校に通ってくる子供たちの味覚は不思議と共通したところがある。
月二回行うお寺の日曜学校は、一部の法要に続き、二部では坐禅、茶道を行い、ゲームなどをして遊んだ後は、本尊様の前で食事を頂く。
本尊様にもお霊供膳をお供えするので食事の内容は肉、魚を用いない精進料理となる。
しかも一汁一菜。
ご飯、お菜に汁、そして漬物。
至って簡素。色彩的にも茶系の食事となる。
むろん人参や豆、ピーマンやホウレン草などの緑黄色野菜も登場するのでポイントカラーはあることはあるが、全体を通しての色彩は茶色く、その上、地味な食卓風景となる。
もう何年になるだろうか、初めの頃、日曜学校では食事はなく12時解散としていたのだが、行事の折に見る子供たちの様子を見ながら、食事を共にする、本尊様の前で頂くことが出来ればいいなあと思って、それから始めたことだった。
初めから精進料理にするつもりだったので、きっと子供たちは嫌がるだろうと半ば楽しみにしていた。子供の味覚は世間でよく言われるオムライス・カレーライス・アイスクリーム・サンドウィッチ・焼きそば・スパゲッティ・目玉焼きという「おかあさんやすめ」メニューが定番で、いわゆるファミリーレストランに並ぶ食事が子供たちの好物なのだろうと思っていたからだ。
確かにそういう食事も好きなのだろうとは思うが、お寺に来る子供たちは一様に煮しめに代表されるような茶色い食事が好きだった、不思議なことに。
しかも無類の漬物好き。
毎回、自家製のぬか床にきゅうり、大根、人参を漬けておく。
食事の配膳をしながら、漬物担当の子供は台所でぬか床に手を突っ込み、漬物を切る。
初めてぬか床というものを見る子供も多く、「手を突っ込んで取り出して」と言うと、一様にビビる。
しばらく躊躇した後、意を決してシャツを捲り上げてぬか床に腕を突っ込む。
その後は、ほとんどの子供たちはぬか床の感触が「泥遊び」に通じるものがあるらしく、争って役を獲得しようとするから傍でみていると、この変化がすこぶる可笑しい。
そして自分で取り出した漬物を洗い、切って、盛り付けて用意するうちに愛着が沸くのか、山盛りにして出す漬物はあっという間になくなってしまう。
味噌汁も同様、毎回、空鍋を見ては子供たちは喜んでいる。
今の子供たちは煮しめやけんちん汁より、ハンバーグやコーンスープだろうと思っていた私の思い込みは、こうして悉く打ち破られていくことになった。
2年前、コロナが流行し始め、日曜学校も食事を取り止め、短縮という形で行っていたが、その内、非常事態宣言が出されてからは、会自体もしばらく休みとなった。久し振りに再開したものの食事はどうしたものかと迷っていたが、11月に入って久し振りに食事の時間も持つことにした。
無論、それぞれのご家庭のお考えもあるので、あくまで食事希望者のみで行うことに決め、
お迎えにいらした保護者の方と次回からは食事を始めることをお話ししていた時に、傍で待っていた子供が嬉しそうに言った。
「私、先生の漬物が大好きなんよ。あのコリコリした沢庵が好きなんよ」
「あらまあ、嬉しいこと!」
私は笑いながら聞いていたものの、実は、糠漬けは自家製だけど沢庵漬けだけは何度やっても失敗し、日学で出しているものは市販品なのだ。
嬉しそうに話してくれる子供を目の前にして、事実を告白するわけにもいかず、ただ笑ってしまったけれども、改めてここで小さな告白をしておきます。
そしてお言葉を有り難く頂戴して、これから精進していくことと致します。
本当に日曜学校の食事を楽しみにしてくれてありがとう。
お寺で待っています。