今年の夏は、異常なほどの暑さだった。

汗をかかない私が、少し動いただけでポタポタと汗が落ちてきたときにはびっくりした。

ああ、これが「汗がしたたり落ちる」ということなのかと、しみじみと実感したけれど、そんなしみじみしているほど悠長な暑さの夏ではなかった。

毎朝、境内の掃除をするだけで絞るような汗が出て、吹き出る汗をぬぐえば掃除の後は、Tシャツも、タオルも絞るほどになる。

挙げ句に、そのせいで久々に汗疹になったことには驚いてしまった。

農作業中に熱中症で農家の方が亡くなったというニュースを耳にして、この暑さでは、さもありなんとこころが痛んだ。

暑さの中、へたばったのは人ばかりではなく、毎日水遣りをする鉢植えや植え込みも、夕方になると無残なほど乾燥して白くなり土はひび割れた。

その上、容赦ない直射日光に軒並み葉焼けを起こした。

時間をかけて大きくなってきたシクラメンが一夜で枯れてしまうし、ギボウシの葉も青々としていたのに、これも葉焼けを起こして枯れたようになった。

どの葉も触ってみれば熱く、この炎天下、直射日光を浴びて立ち続けていなければならない植物の過酷さを思った。

植木鉢を庇の下へと移動しても、熱く焼けたコンクリートでどうにもならない。

夏が去り、秋が来るのを辛抱強く待つしかないのだろうと思った。

そんなある日、知り合いから「金のなる木」をプレゼントされた。

几帳面な方で、こまめに手入れされているらしく次々と育って、今や4鉢に増えたということだった。

「丈夫で手が掛からないから。放っていても大丈夫。」

いやいや私は、枯らすのが専門でグリーンフィンガーならぬ、ブラックフィンガーなんですよと言っても「大丈夫!」とまったく気にする風でもなく、とうとう

噂の「金のなる木」はやって来た。

見ると完全なる多肉系の植物で、これは直射日光の厳しいこの場所では無理だろうと思ったが、

「ま、置いてみて」

ということで、ふた鉢は花壇の傍に並んだ。

初めのうちは無事に青々として元気が良かったのだが、週を越え、しばらくすると、そばかす状の黒点が出来、それがほくろになり、大きなシミになって、とうとう次々に葉が落ち始めた。

水が原因ではなく、明らかに陽射しだった。

場所を変え、陽が当たらないようにしたものの落ち始めた葉は無残にも落ち続け、とうとう茎だけになってしまった。

「やっぱりここは、直射日光がきついんだねえ」

贈り主が惨状を見て言った。

「でも、丈夫だから。ほら新芽がもう出ているでしょ。冬は中に入れておけば良いですから」

多肉系植物の冬の寒さ管理。

新たな難題を頂き、やはり私には「金のなる木」と呼ばれるものには縁がないように思うのですよ、と贈り主の後ろ姿を見送りながらぼやいていた。