声は一人だけじゃない
闇の中で歌ってる
それぞれの響きに別のオクターヴが
重なる
手と手が結ばれて
恐れは解き放たれる
たった一人でも
そこから始まるんだ
一人の声さえあればいい
先はわからなくても
一人の声は 一人のままじゃない
誰かの声がついてくる
一人の声
そこから始まるんだ
暗闇の中で歌いだそう
一人の声が誰かの声を連れてくる
高らかに歌い、空気を震わせよう
一人の声
それが 誰かの声を呼びよせ
やがて誰もが歌うだろ
『 One Voice』歌詞 バニー・マニロウ
バリー・マニロウ

コロナ禍になって丸2年が過ぎ、今年で3年目に入る。
いかに暢気な私といえども、この先のことを考えると不安になる。
人が集まることが難しくなり、「和」という字に口が付いているように食事をともにすることは人との縁を深めていくと言った父の教えも実践できなくなって久しい。
人との距離を取るように。
用を済ませたらすぐに帰る。
おしゃべりはしない。
人は、ぽつんとした点になった。
こんなことがあるのだなあと、激変した日々の暮らしを思いながら驚いてしまう。
人生とは、予想できないものー
ということは、よく聞いていた。
よく聞いていたけれど、まさか自分の身に時代の火の粉が降り掛かってこようとは予想だにしていなかった。
正に暢気だったわけだ。
そんな閉塞した時間の中で、ふと頭の中で流れ続けている曲があった。
高校時代に好きだった曲で、歌手の伸びやかな声も好きだったが、詩の内容が深くこころに残った印象的な一曲だった。
そんな遠い過去の記憶が突然、この災禍の時によみがえってくるということも人の記憶の面白さだろうか。
「 One Voice 」
それが、この曲だ。
どういう訳か初めて聞いたときから、曲が流れると河をいく二艘の小船の映像が浮かんでくる。
濃い朝靄の中、両岸に葦の生い茂る河の中を2艘の小舟がゆっくりと進んでいる。
並ぶことはなく、それぞれ単体で進んで行く。
そのイメージがなんだか「時間」を表しているようで頭から消えない。
船はそれぞれ「個」なのだ。
だけれども、朝靄の中、同じ流れを進み、時間を共有している。
母を見送ったときも、この曲が頭に浮かんだ。
母の船は先を行っているのだ。
でも、同じ時の流れのなかに私の船も進む。
今回、コロナになって再び、この曲が頭の中で流れ始めた。
一人の声は 一人のままじゃない
誰かの声がついてくる
一人の声
そこから始まるんだ
暗闇の中で歌いだそう
一人の声が誰かの声を連れてくる

そう、私たちは独りではないのだ。
暗闇の先に灯る明かりを信じて、願いを持って歩き続けていけば、きっとその先に何かをみつけられる。