10月佛教講話会のご報告

講師 群馬県 常仙寺住職・育英短大名誉教授 佐藤 達全先生

演題 新型コロナウィルス感染の中で考えたいお釈迦さまの教え
・・・奈良の大仏建立を手掛かりに〈いのち〉と向き合う・・・

奈良の大仏様というと今や殆どの日本人が知る有名な仏様です。その大仏は何故、建立されたのかというと当時、奈良で起こった天然痘の大流行に起因します。

死亡率が高かった天然痘の流行を鎮め、世に平安をもたらすように聖武天皇が発願され建立されたのがあの奈良の大仏様です。しかしその天然痘は、1796年にワクチンが開発され、1980年にWHOが撲滅宣言を行うまで長い間、人々を苦しめてきました。

人は何故、死ぬのか。病を得て、老い、そしていつかは死んでいく。

自分でどうすることも出来ないこの事実を お釈迦さまは「四苦八苦」と言われました。

しかし考えてみると総てのものは変化していく。

赤ん坊が成長していくことも、歳を取って老いていくことも同じ変化です。

総てのものは移り変わっていくのだという大前提を先ず受け入れていくことが、自分を苦から解放していくことに繋がって行くのです。

仏教は、人が生きるための教えです。そして「仏陀(ぶっだ)」とは、生命の本当の姿に気づいた人という意味ですから、お釈迦さまに限らず皆、総ての人が仏陀になることが出来るのです。その為には、いのちへの本当の理解を学ばなければなりません。

人は、関わりの中で生かされています。

自分の思い込みだけで見つめていると全体像はなかなか見えてきません。相手の立場から見ればどうなのか、常に自分の都合良く物事を見ていこうとする思考を見つめ直し、正しい視点を持つことが苦からの解放に繋がって行くのです。

色眼鏡をかけていると、本当の色と違って見える。我を張らなければ本当の姿が見えてくるはずです。

そして敵対していると思っているものも、気が付いてみれば、お互いが支え合って、お互いの命を支えている相関関係にあるということに気が付くでしょう。

コロナ禍が続く中でWith コロナという言葉が生まれました。

今回、例え終息したとしてもウィルスとの戦いは次から次、際限なく今からも続くことでしょう。

いのちは互いに関わり合い、支え合って生きている、生かされているのだというのが佛教の教えですが、その教えの通り、コロナ流行の中で改めて人との繋がり、自分だけの幸せを考えるのではなく、相手の幸せも同時に考える。

幸せとは自分だけで生み出せるものではなく、相手との営みの中で生み出されていくものなのです。

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