一日は24時間である。
これはよく分かっている。
けれども苦手なことに取り組んでいるときの時間の長さと、好きなこと、楽しみにしていたことを行っているときの時間の流れが同じ速度だということが、どうにも信じ難い。
本当にそうなのだろうか。

日常生活を送る中で、自分の好きなことばかりをやるわけにはいかない。
不得意なことにも取り組んでいかなければならない時間もある。
その為には、処理しなければならないことに優先順位を付けること。
こうすれば仕事がはかどり、慌てることなく余裕をもって毎日を過ごすことができる。
これは、よく言われることである。
いろんな本に書いてあり、いろんな方からもそう教えて頂いてきたはずなのだ。
けれども、未だに実行できないでいる。

今月のこの日からこれをし始めれば、この日までには片付く。
この頼まれごとを早く仕上げて送らなければならない。
苦手なことから始めた方が気が楽だ。
そう思っている。
何より「やらなければ」という不安感から解放されるのだから。
段取りを決めて「明日はやろう!」と布団に入って休む。
けれども翌朝、目が覚めて身体を動かし始めると、つい得意な方から片付けてしまい、気が付けば一日が終わっているという悪循環を繰り返している。
しかも悪いことに好きなことから始めると時間が経つのも忘れ、夢中になってしまう。
区切りをつけることが出来ない。
どうすればいいのか。

それは意思が弱いからだといわれれば、それっきりのことだが、自分なりに考えてどうにか克服する為にと携帯電話のタイマー機能を使ってみた。
午前中に仕上げたいことのひとつずつに時間を決め、タイマーで音が出るようにセットする。
2時間経ってチリチリとタイマー音が鳴り、ひとつの仕事は終了。
次も同じようにして時間を切って仕事をする。
すこぶる調子がいい。
区切られた時間の中で仕上げなければという緊張感が自分の中で生まれる。
いやー、だらしない私でもやれば出来るものだと文明の機器に感謝しながら数日過ごした。
数日は安全だった。

けれども、人間には習得能力があるのだ。
何日か経つ内に、タイマーのベル音にも慣れてしまい、ワクワク感がなくなり「ああ、また鳴っている」というくらいにしか感じなくなってきた。
初めの時にはベルが鳴れば、ひとつ終了。
途中であっても次に移行。
というリズムを守っていたのだが慣れてくると、ルールを破ってベル音を聞いてもひとつのことをやり続けていくようになった。
人の習性は治らない、やはり、この試みも無駄だったのか
人生すごろく、また振り出しに「もどる」という目が出てしまったようだ。