お釈迦さまのお誕生日は「降誕会(ごうたんえ)」
お悟りを開かれた日は「成道会(じょうどうえ)」
亡くなられた日は「涅槃会(ねはんえ)」
これらは、お釈迦さまに関係する三佛忌(さんぶっき)といわれる日で、総てに「忌」の字が付く。
何故「忌」が付くのか、子供の頃から不思議でしょうがなかった。
誰しもが「忌」という字を見ると、即、死をイメージし、何事か良くないこと、忌避的なものではないかと心が引いてしまう。
「忌」という字が、神聖な儀式をさすというもう一つの意味は、現在では殆ど考えつく人はいないのではないだろうか。

お釈迦さまが亡くなられた涅槃会以外は、二つとも喜ばしいお祝いの日なのに、と思う。
ひとつは、お誕生日であり、もうひとつの成道会も、お釈迦さまがお悟りを開かれ、佛教の教えを説かれ始めるエネルギーみなぎる佛教誕生の、正にその日なのだ。
それなのに何故、お誕生日や佛教のスタートの日までもが「忌」なんていう縁起でもない字が付くようになったのだろうか。

その中で一つだけ降誕会は明治の頃から「花祭り」という別名でも呼ばれるようになり、私も降誕会というより花祭りという名前に馴染んで育ってきた。
花祭りは、子供のお祭りだから・・・と教えられ、事実、その日は賑やかに法要後は劇の出し物があったり、境内でバザーが行われたりした。
そういう訳で「降誕会」と言われると、功徳があってありがたいという印象もあるけれど、反面、高尚で難しそうなイメージも生まれてしまう。
子供の頃から聞き馴染んだ「花祭り」と呼ぶ方が、即、あの光景が頭に浮かんで心が和み、すっと、花御堂に祀られたお誕生佛に甘茶を注いでいる光景が思い出される。

それでは、お悟りを開かれた成道会をどうネーミングをするのかと言われれば、頭が痛い。
いったい「悟り」ということから難しくて分からない。
お釈迦さまが、お釈迦さまとして再誕された記念すべき日をどう名付ければ皆さんに分かりやすく伝わるのか、伝えることの難しさを思う。
結局、百聞は一見に如かず。
どう名付けても、どう説明しても、それぞれの中に正しいイメージは伝わらない。
兎に角、一度来て頂くことに、これに限る。
それしかないと思う。