今年は暖かな冬かと思っていたら、昨年末から急な寒波が押し寄せた。
やはりねえ、それはそうだ。
暖かいままでは冬は終わらないだろうなあと思いながらも急な寒波に震えている。
夏の暑さにしても、冬の寒さにしても、熱気や冷気は身体を押してくるような感覚がある。
そのたじろぐような自然の強さの前で身をしのぎながら、ただ季節が過ぎていくのをじっと待っている。
そんな無力な自分に情けなさを憶えながら、さりとて猛暑の前ではうだっているしかなく、極寒の時にはストーブの前から動くことが出来ないでいる。
春は木々が芽生え、花も次々と咲き始めるので見ているだけで嬉しくなる。
思わず観客の私までも心が前向きになっていくようでワクワクしてくる。
それに引き換え、夏は土が乾き、熱波のために葉が茶色く焼けてしまうのは見苦しい。
冬は秋の紅葉が終わると一斉に葉が落ち始め、椿や柚の木を残しては皆冬枯れして
姿を消す。その淋しい冬の庭に白椿がぽっと咲いているのには救われる。
先日、落ちた葉を掃き集めていたら、除いた葉の下に小さな突起をみつけた。
なんだろうと顔を近づけてみるとヒヤシンスの芽だ。
敏感な自然の動きに驚く。
屈んでじっくりと土の上を観察すると、あちこちに小さな突起が顔を覗けている。
春の花々がこの寒中に自分たちの出番を感じて顔を出してきたのだ。
まだ、風は冷たく、朝には霜も降るというのに大丈夫なのだろうか。
そんな私の勝手な心配など聞く耳持たずといった風にツクンと頭を出している。
―― 君の方こそ何をボヤボヤしているんだ。
すぐ近くまで来ている春の足音が聞こえないのかい?
早く準備を始めないと次の季節に間に合わないぞ。
――そんなこと。
だって今は厳冬、風が一番冷たい冬の盛り。
春なんて、まだまだ先のことだよ、もう少し暖かくなるのを待って出てくれば良いものを。
私は冷たい土を触りながら思うのだが、植物にとっては今が動き始める「時」なのだろう。
――さあ、準備怠りなきよう、春が近づいてまいりましたぞ。
ツクンと頭を突き出したヒヤシンスの芽が私に語りかける。
そう、月日の流れは速い。
一年は、365日しかない。
その毎日を大切に扱いながら過ごしていく。
自然の姿に押されて、私も先の一歩を踏み出そう。