「少欲知足の実践」
令和六年の幕開けは、石川県能登地区の大地震という衝撃的な出来事から始まりました。
「あけましておめでとうございます」という言葉が心に引っ掛かり、思わず小声になってしまうほどショックを受けました。亡くなられた多くの方々に改めて心より御冥福をお祈りしたいと思います。
そして支援といっても大したことが出来ず無力である自分を恥じながら、困難な状況で大変なご苦労をされておられる被災地の多くの皆さま方の一日も早い復興を強く念じています。
更に昨年は災害続きで、大雨による災害、猛暑の夏。
こうした天災の多くを見るにつけ、総てのことが 我々人間に対する警鐘のように感じ られてなりません。
世界中の人間が豊かさを求め、便利を求め、経済中心に動いてきたことが、大きな要因となっているように思います。
要するに人間が欲望を追求した結果、地球全体の本来の姿、有り様を壊してしまった、それが今の問題を引き起こしているのです。
佛教には「知足」という教えがありますが、「足りている」の判断基準は大変難しく、例えば「腹八分目」といってもどれくらいが腹八分目なのか、いろんな充分があるので、数値でも示して一概に統一することは出来ません。
結局、人間の欲というものには際限が無く、ひとり一人の個人の中で、自分の欲望をどうコントロールし、セーブしていくかということに尽きると思います 。
時々、私は檀家の皆さんに「人間の欲深さと、ライオンの欲との違い」についてお話しすることがあります。
あの猛獣といわれるライオンが他の動物に襲い掛かって食べている光景を見たことがありますが、ライオンも生きているわけですから何かを食べなければならず、人間と同じように他の命を頂くことによって自分の命を維持しています。
ライオンのリーダーは空腹になると、子どもや群れの仲間たちの為に群れの仲間と力を合わせ て他の動物を襲い、 獲物を得て空腹を満たします。狩りが成功しなければ、中には 餓死してしまうライオンもいるのだそうです。
幸いにして空腹を満たすことが出来たものは、その後、どんな獲物が自分の前を通ろうとも襲いかかることはせず知らん顔をしているのです。
ここが人間との大きな違いで、もし人間が同じように食事をしてお腹がいっぱいになったとしても 、目の前に美味しそうなものが出てくると 、すぐ手を出して自分のお腹に押し込んでしまう。
結果的に食することもなく廃棄することさえある。
結局、いろんな命を無駄にしてしまう人間が多いと思うのです。
他の命を無駄にし、自然を破壊し、汚染している人間。
今、問題になっている環境汚染等から地球を救う為には、人間が、もっと謙虚になる必要があるのではないでしょうか。
真剣に知足を実践して調和していかなければ、戦争は終わらず、人類は本当に消えてしまうだろうと思います。
少欲知足を世界中の人達が真剣に実践していくことが、今、正に求められているように感じています。
合掌
神應院 住職 西村英昭