「 佛さまの灯明 」

異常な長雨が各地に大きな被害をもたらし、多くの犠牲者が出たことは本当に痛ましく残念なことです。心からご冥福をお祈りすると共に被災された方々に改めてお見舞い申し上げます。

さて、神應院では戦後間もない頃から「子ども会」という子供が集う行事が月に一回ありました。当時、五~六十人の子どもが、お寺の本堂に集まって童話を聞いたり、簡単な佛教の話しを聞いたり、ゲームをしながら楽しい時を過ごす。
当時の子どもにとって非常に楽しい集まりでした。
勿論、お楽しみだけではなく、掃除をしたり、廃品回収をしたり、子どもの出来る奉仕活動の実践ということもありました。
何もない時代でしたが、楽しくワクワクした思い出が今も心の中に残っております。

その子ども会で「四つのお誓い」という言葉を必ず唱和します。
一つ 人の為に尽くします。
一つ 悪いことはすぐやめます。
一つ しっかり勉強します。
一つ 立派な人になります。
この言葉を教えて頂きながら、本尊様にしっかり実践していくことをお誓いし、子どもながらに自分の心を照らす言葉として胸に刻んできました。

現在この子ども会は、昭和三十年、当時セイロン(今のスリランカ)の駐日大使 スーサンタデ・ホンセカ氏が来寺された折、「何故、日本では、お寺に日曜学校がないのか。是非、日曜学校をやるべきだ」とのご教示を頂いて以来、今も、月二回 お寺の日曜学校として続いております。この四つのお誓いは一見、簡単な実践項目のように見えて中々、子どものように素直に取り組めません。
頭の中では、しっかり理解し、せねばならないと考えているのに、いざ実践という場面になると実行できない。
それはどうしてなのでしょう。

「三歳の童子それを知ると言えども、八十の老爺(ろうや)それを行うは難し」
という言葉があります。私たち現代人は、知識を得る機会は豊富ですが、その知識を本当の意味で理解し実践していくことを怠っているように思えます。
ものごとの上っ面だけを情報として知り、理解したと思うのではなく、知を深く掘り下げ、その真髄を実践していこうと努力することこそが一番大事なではないでしょうか。
今、世の中は、コロナの流行、くり返し起こる災害等、次々と災厄が降り掛かってきます。
世の中の空気は沈潜し、これから先、自分の人生もどうなっていくのだろうかと不安に押しつぶされそうになります。
しかし、この「四つのお誓い」の言葉を思い出して下さい。
そして声に出して唱えてみてください。
繰り返し唱えている間に、あなたの心の中に沸々と小さな力が湧いてくると思います。
暗い材料の多い世の中ですが、その中で落ち込み、不安に流されるのではなく、冷静に自分の心を見つめてみましょう。そして、佛教徒として自分から周囲を美しく清めていく実践を小さなことでもいいから積み重ねていってみて下さい。
一つ 人の為に尽くします。
人様に捧げた佛教の灯明は、気が付けばあなたの足元もほの明るく照らしていくことになるのです。

合掌
神応院住職 西村 英昭