新年明けましておめでとうございます

毎年のことですが、新年のご挨拶をすると、お互いにとても新鮮な清々しい気持ちになります。
さあ、今年も始まるぞと新たな気持ちが自分の中で沸き上がっていくのを感じます。

昨年は、コロナ禍から少し前に向いて歩き始めた歳でした。今までは外出を控え、人に会うことも出来るだけ避けてきた日々でしたが、少しずつ外出することを始め、人との交流も徐々に戻ってきました。
「何だか嬉しくなった」
「家の中にばかりいると気持ちが沈んでしまって」
「おしゃべりって大事なんだなと思いました」
そんな言葉が檀家様との会話の中でも、よく聞かれました。

つくづく人は一人では生きていけないものなのだと痛感しています。
「人」という字は、互いに支え合って生きている姿を表している聞いたことがありますが、人間は一人では成立しない生き物なのです。お互いが助け合って、足りないところを補い合いながら生きているというのが人間の姿なのです。

コロナで人との接触が極端に減り、心が不安定になってしまう人も多かったように、他の人と交流することによって人は心のバランスを保っているのかもしれません。

反面、交流が誤解を生み、感情的に行き違い、戦争を引き起こすということもあります。ここ数年、世界で来ている戦争はその最たるものでしょう。

一人では生きていけない人間。
それでいて対立し、争い事を起こしてしまう人間。
そんな残念な道筋にならないようにするには、いったいどうすれば良いのでしょうか。
私の尊敬する方で長野県の藤本幸邦老師という方がおられました。地元の方々に「おっしゃん」と呼ばれ親しまれた方でした。その老師様の残された詩で次のようなものがあります。

うちじゅうのこころもそろう

はきものをそろえると
心もそろう
心がそろうと
はきものも そろう
ぬぐときにそろえておくと
はくときに こころがみだれない
だれかがみだしておいたら
だまってそろえておいてあげよう
そうすればきっと
せかいじゅうの
ひとの心も
そろうでしょう
藤本 幸邦老師作

佛教には「伝播(でんぱ)」という教えがあります。お釈迦様自身も、ご自分のことを「種蒔く人」といわれたように、私たちひとり一人が「種蒔く人」となるならば、今世界で起きている悲しい出来事が、少し減っていくかもしれません。

そんなことは無理だと端から決めないで、先ずやってみる。
日々の生活の中で、一粒一粒蒔いていく種蒔く人が増えれば、世界は、もっと穏やかになっていくのではないでしょうか。

世界中の人の心がそろう種を一粒、今日から蒔いていきましょう。

合掌
神応院住職 西村 英昭